
序
2025年には、2024年までの作品を対象にした百合ラノベ総選挙を開催させていただきましたが、2025年も続々と刊行された新作百合ラノベの注目作をまとめました。
ガールズラブ
便宜的に、大まかな作風の傾向からガールズラブとガールズラブコメを分けてみましたが、こちらでは、コメディ色が強い作品も含め1対1の関係が中心に描かれているものや、シリアスよりな恋愛ものを取り上げます。
アフタヌーンティーはいかがですか? わたしと先輩の、不純で一途なふたり暮らし/桃田ロウ
【あらすじ】大学生のかなたは縁があって先輩の結衣の家で一緒に暮らしている。わがままも聞いてくれるとっても優しい先輩だけど、いつも女の子をとっかえひっかえして朝帰りしてくる先輩の言う「好き」だとか「かなたは特別」ってどういうつもりなの?結衣に惹かれていく心と不実な恋なんてしたくない気持ちの間で揺らぐかなた。先輩×後輩大学生百合。
特定の恋人をつくらない主義の女たらしの結衣先輩と、恋愛事には消極的な後輩のかなたの関係を描いたガールズラブです。遊び相手にはことかかない百戦錬磨のはずの結衣が、純朴がゆえに無自覚誘い受けたらしなかなたに振り回され気味なのがおかしく、ふたりの「これもうほとんど付き合ってるのといっしょでは?」というレベルのやりとりと、それでもいろんなすれ違いの結果、恋人同士にはなかなかなれない、ふたりのもどかしい距離感がクセになります。
彼女のカノジョと不純な初恋/Akeo
【あらすじ】赤点取ったら一人暮らしは終わりと告げられ崖っぷちな高校生のユキは、同級生で成績のいいつかさから、勉強を教える代わりに夏休みまで泊めてほしいと提案され、つかさがカノジョ持ちと知りつつ乗ってしまう。距離感の近いつかさに「これって浮気ならない?」と困惑しつつも、たがいに恋愛感情を持ってなければセーフと割り切ろうとするけれど……。
ユキとつかさの「これって浮気?セーフ?」という距離を反復横跳びする危うい均衡の上に成り立つスリリングな関係からはじまって、そうくるともちろん黙ってはいられないつかさの彼女である玲羅との三角関係、さらにユキを秘かに思うユキの親友・弓莉まで絡んできて修羅場の予感……と終始ドキドキさせられっぱなしの不穏で不純なガールズラブ。2巻では、いけない方向に覚醒したつかさが火に油を注ぐとんでもない展開となり、ますます目を離せなくなってきました。
優等生がアダルトグッズを買いに来た/4kaえんぴつ
【あらすじ】高校生の水城綾が実家の中古書店でアルバイトしていたある日、アダルトグッズコーナーの前で逡巡している女性を見かねて声をかけると、その女性はクラスの優等生・茅野有季だった。周囲から医者になることを期待され勉学に励む彼女は、そのストレス発散をアダルトグッズに頼っていたのだった。周囲の期待を裏切るのが怖くて、進路への迷いを誰にも言えずにいた有季にとって、悩みに理解を示してくれた綾と気負わずに過ごせる時間はかけがえのないものになっていく。一方、綾はなにかと突っかかってくる後輩の常盤咲良に煩悶の影を見てとり、手を差し伸べようとする。
進路に、将来への不安に惑い、人の背中を押すことの責任について思い悩んだり、真摯に他者との関り方を模索する姿を克明に写し取り、恋愛感情が芽生えるまでの過程をじっくりとていねいに描いたガールズラブ。綾への気持ちをいち早く自覚する咲良と、紆余曲折ありながらも、ついに綾に対する気持ちも固まった有季、これからの3人の関係から目が離せません。
カップケーキと恋の怪物/雨坂羊
【あらすじ】他人に好意を持たれるのが怖いというクラスメイト平樹凡に、ひょんなことから嘘の告白をして(友達として)付き合うことになってしまった高嶺彩菜。平の芝居がかった言動に困惑しつつも、気が置けないつきあいに心地よさを感じ、人となりを知るにつれて惹かれていく――と同時に嘘の告白をしてしまったことを引け目に感じてしまい……。
「まんじゅう怖い」が百合になった!?というわけで落語をモチーフにした異色のガールズラブ。おとなしく教室の隅にいるタイプだったのに突然キャラ変してクラスで浮いている樹凡と、内心ついていけてないけど一軍女子に擬態している彩菜。立ち位置は反対のようでいて、どちらも不器用なところのあるふたりがちょっとずつ心の距離を近づけていく様は微笑ましいです。樹凡のボケと彩菜のツッコミも楽しい、総じて明るくほのぼのした作風ですが、両親のごたごたを間近に見て育ち、恋愛沙汰からは距離を置いていた彩菜が恋の魔力にとらわれて、樹凡にのめりこんでいく自分を抑えられないことを恐れるといった心理描写も読みごたえがあります。
クラスの姫は私のわんこ/犬甘あんず
【あらすじ】菜花くるみは、誰からも好かれているクラスメイトの空橋星羅から、突然、自分の飼い主になってほしいと告白される。到底受け入れられるはずのないお願いを、やむなく受け入れたときから、くるみの知る日常は崩壊していく。
獣になって貪る快楽を一度知ったら戻れない。ダメと思う気持ちと、もっとという衝動のあわいに揺れ動く心理描写、ときには友達のように笑いあって、恋人のように甘く睦みあうご主人様と飼い犬という一筋縄でいかない関係が描かれた刺激的なガールズラブ作品。
2巻は、ご主人様になったり、わんこになったりと、ますます星羅との秘密の関係にのめり込んでいくくるみに、ふたりの関係を怪しむくるみの妹のみずきも絡んできて、すれ違ってしまった姉妹の関係も描かれたせつない姉妹百合としても絶品でした。
憧れのお姉様が「妹になりたい」って甘えてくるんだけど!?/ としぞう
【あらすじ】高校生の橘澄香は、憧れの生徒会長・大庭撫子と、親の再婚で姉妹になってしまった。そのうえ、撫子が家では澄香にお姉ちゃんになってほしいと甘えてきて……遠くから見守るだけでよかったのに、どうしてこうなった!?
『百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話』に続く、としぞう先生の新作百合シリーズ。学校では毅然とふるまう生徒会長が、家に帰ってくれば甘えん坊になってしまうないしょの立場逆転姉妹生活という発端からして魅力的です。ぐいぐい距離を詰めてくる撫子のエスカレートする要求に「姉妹でこんなことまでする?」というドキドキがたっぷり堪能できるコメディ作品ですが、ふたりの背景もきちんと掘り下げてて、しっかり百合してます。撫子は澄香にはっきりと恋愛感情を向けている一方、推しとして撫子を捉えてきた澄香の気持ちがどのように変化していくか、続きが楽しみです。
溺れるベッドで、天使の寝顔を見たいだけ。 #ふたりで犯した秘密の校則違反/上栖綴人
【あらすじ】不動産会社の手違いをきっかけにいっしょに暮らすことになった高校生の彩凪と悠宇。初日から強く惹かれあったふたりは、激しく求めあう仲に。
デビュー作『眼鏡HOLIC』以来の百合作品である本作。情熱的な官能描写を堪能できる作品です。まだるっこしいのはやめにして出会ってすぐに恋人関係になるのが痛快です。半面、じょじょに距離が近づいていって恋に至るような繊細な心理描写には欠けるところもありますが、いままで慣れ親しんできた百合小説の文法とはちょっぴり違った感触の作品が出てきたことも、いまのGLラノベの豊饒さを示すものといえそうです。彩凪のいかにもラノベの主人公らしい造形と、悠宇がモデルという設定を活かし、アパレル業界を舞台にした本格的なサクセス・ストーリーであることも異彩を放っています。
凍てる輝きとペペロンチーノ/城井映
【あらすじ】ある日、人の言葉や文字の内容が認識できなくなってしまった高校生の汐梨は、なぜか校舎の片隅に打ち捨てられた冷蔵庫に隠れ住む少女・梗佳と出会う。彼女の言葉だけは聞き取ることができた汐梨は、通じ合える相手ができた喜びで、梗佳のもとに通い詰めるが……。
やや饒舌な語り口は少しアクが強いですが、互いに惹かれあい、ふたりだけの世界に耽溺していく過程やしだいに執着心を募らせていく心理描写は納得のいくものでした。
顔だけ良いクラスメイトが、やたらとグイグイ来る百合の話。/能代リョウ

【あらすじ】クラスでは目立つグループにいるけれど、内心、人づきあいを疎ましく思っていた海道律は、周囲の空気に流されてつきあった彼氏から望まぬキスをされそうになったところをクラスメイトの矢来綴に助けられる。ところが、それからというもの、綴がグイグイ迫ってくるようになって……。
先行して連載開始したはちこ先生による漫画版の原作が刊行。突飛な行動ばかりする綴の存在が、わけが分からないからこそ、いつも頭から離れない存在になって、好きに変わっていくまでの流れは王道。ふたりとも恋を自覚したときの描写などが良いです。
ガールズラブコメ
この項では、コメディ要素が強いもののなかで主人公に複数人から好意を寄せられる作品を紹介します。
だれがわたしの百合なのか/悠木りん
【あらすじ】生徒会室で、自分宛ての匿名のラブレターを見つけた並木ひと葉。差し出す機会があったのは会長代理のクールな才媛・京、数字にも強いコミュ強ギャル会計・鹿乃愛、校内で人気のゆるふわ神絵師書記・咲姫の3人。この中にいるはずの差出人をあぶり出すために、彼女たちとデートを重ねるうちに、ひと葉がいままで知らなかった彼女たちの顔が見えてきて……。
著者久しぶりの百合作品は、初のコメディ作品にして初のシリーズ化作品。コメディ要素を前面に押し出しつつも、しっかりと各登場人物の掘り下げもされていて、シリアス成分の配合もばっちり。ひりつくような青春の焦燥を描いた前2作で魅せられた人もきっと大満足。
みかみてれん先生が「ありおと」「わたなれ」で切り拓き、名称としてもすっかり定着してきた「ガールズラブコメ(ガルコメ)」ジャンルの新たな代表作の誕生です。
人間ちゃんの警戒心が薄すぎる!/ 鐘楼

【あらすじ】人間の女の子たちと仲良くなりたくて、人間界にやってきたサキュバスの明日乃。女学院を舞台にハーレムづくりに乗り出す。
魔力なんて使わずに自身の魅力だけで落としたい――意外とストイック(?)なところもあるみたいで、下心も浮気心もたっぷりだけど、落としたい彼女たちの心からの願いを叶えてあげたり、愛されなかった魂の餓えを癒したり、失っていた心を再び芽吹かせるための光になったり、どうやらこのサキュバス、伴侶となる女の子は幸せにしたい気持ちだけは本当みたい。
すぐケンカする都会ギャルと京美人を仲直りさせたいだけなのに! (※わたしを取り合うのはやめなさい!)/山賀塩太郎
【あらすじ】栗本燕は、上京して入学した学校で、推しの読モだった田桐聖良と出逢って早々に熱烈な告白を受ける。あまりの急展開に思い余って、同じ地方出身者のよしみで京都から来ていた観月織音に相談してみようと声をかけたら、また惚れられて……!?
双方向からぐいぐいこられ、しかも、どうやら犬猿の仲らしいふたりの喧嘩にも巻き込まれて、燕の猛獣使いの才能が開花していくガールズラブコメ。スピーディな展開が痛快です。
小悪魔たちが離してくれない!/半田畔
人づきあいが苦手で、極力、他人と関わりを持たないようにしている高校生の休目綿子は、道端で拾ったサキュバスのニイナを家政婦代りに同居させることに。隙あらば精気を奪おうとするニイナ、ならば防御の合気と知恵で反撃だ!懲りないニイナと攻防を繰り返し、絶品の精気の持ち主らしい綿子は、ほかのサキュバスたちも惹きつけて、いつしか静かだった少女の日常はにぎやかになっていく。
ロマンシス/バディもの
異界掃滅のソルジャーメイド/河鍋鹿島
【あらすじ】人々を飲み込む怪異「ハウス」の対処にあたるソルジャーメイドの一員・シオンは、新部隊の隊長に任命される。ただひとり付けられた隊員のアイリスは、ふだんは妙におどおどしているが、ひとたび「ハウス」に突入すると、一転、勇猛果敢に戦う不思議な少女だった。
失った仲間から受けた恩を返すため親身にアイリスに向き合おうとする不器用なシオン、秘密を抱えるアイリス。ふたりの間に育まれていく絆が描かれるバトル・ファンタシー。女性だけの戦闘集団を描いているだけあって、メインのふたり以外にもさまざまな関係性が派生しているのがうれしいところ。2巻では、すれ違いを生じてしまったシオンとアイリに、7人分の嘘と秘密が絡み合い百合成分もますます濃厚になっています。ミステリ風の展開とお話づくりが非常にうまく、伏線好きにはたまらない一冊でした。
殺し屋JKとハンバーガー/猿渡かざみ
【あらすじ】父親の借金を背負い、年端もいかないうちから殺し屋として生きてきた高校生のちどりは、師匠のマチルダから、同じ高校生のツバメと組むように命じられる。
ハンバーガーをこよなく愛する殺しの天才・ちどり、由緒正しき暗殺者の家系のクールな箱入り娘・ツバメ。即席バディが、駄弁って、喧嘩して、お仕事する殺し屋少女の日常を描いています。殺伐とした世界観を背景に、反発しあいながらもしだいに心の距離を縮め認め合っていく、思いのほかストレートな友情ストーリーを展開しているのが爽快です。
その心霊バイト、危険につき ~ビンボー少女とパチモン巫女のオカルトバイト営業忌録~/雪車町地蔵
【あらすじ】借金10億。可能な限りの内臓や角膜は売ったけど、完済にはまだ足りない。困った架城日華は、高額報酬につられ、命の保証なしという心霊バイトに飛びつく。そこで、なぜか巫女の姿をした少女・砥上藍奈と出会う。お人よし少女と、クールな巫女もどきの少女が危険なバイトをこなしていく連作ホラーアクション。
1話目から「これふつう最終話に持ってくる話では?」と思うくらい、スピーディな展開のなかでふたりの関係性がキャッチーでコンパクトにまとめられたバディものです。
ハウリング・ブレイズ 葬焔の剣士と不死の魔女/志瑞祐・原案:遠坂あさぎ

【あらすじ】人々を飲み込んで現世を侵食する異界<黑樂園(エリユシオン)>の生み出した災厄<魔女>。その魔女を狩る月宮薫は、<白花の魔女>フィオナと出逢い、彼女のボディガードを頼まれる。ある目的を抱えた薫は、フィオナに協力することにし、喫茶店のマスターでなんでも屋を営むフィオナの仕事を手伝うことになる。
恐ろしい力を秘めつつも物腰の穏やかなフィオナに、薫はすこしづつ信頼を傾けていきます。薫とある人物との関係の行方が楽しみです。
私の怪談師はポンコツ可愛い 怪談収集はデートに含まれますか?/石川扇
【あらすじ】霊能力があることをひた隠し周囲と距離をとっていた白春青は、人目を惹く容貌ながら誰とも交わらないクラスメイトの夏目咏から、怪談収集の手伝いをお願いされる。怪談師を目指す咏は、自身の怪談話がちっとも怖くないのを気に悩み、怪談師として成長するために青の力で本物の怪異に出会ってみたいというのだった。怪異を通して互いの拠りどころになっていくふたりを描いた青春百合ホラー。
人間関係にはよわよわだけど、霊にはつよつよな霊能力者・白春青と、その意気込みとは裏腹に一向に上達しない怪談師・夏目咏。怪談師とその助手というより、すっかり霊を探知できる怪談師と拳で祓う霊能力者の祓い屋コンビみたいになってますが、ふたりが悪霊どもを叩きのめしていくのが痛快なホラー作品。新たな仲間とともに本格的な活動を始めた咏の隣にいても恥ずかしくない存在になって、ずっといっしょにいたいと願う青が、咏の前では素直になれなくてすれ違ったりする初々しい百合作品です。
うっかりドロボウになったけど影の薄い私には天職でした/小林湖底
借金を抱え一獲千金を夢見る少女・ノーラは、折からの不況と生来の存在感のなさが災いし就職難にあえいでいた。借金取りから助けてくれたフウカに導かれて就職したのは義賊を標榜するドロボウ組織だった。けれど、嫌々はじめたドロボウ稼業は存在感のないノーラにうってつけで……。弱点を強みに変えて、誰からも相手にされなかった自分を見つけてくれたフウカと絆を深めていく。そんなノーラを仲間に引き入れようと悪党少女たちが入り乱れるファンタシーアクション。
ダンジョン報道の最前線/小林湖底
ダンジョンを中心に栄える都市・ミルベルで、新聞社に勤めるミルコは、冒険者の活躍を伝える随行記者になることを夢見ていたが、取材させてもらえるのはゴシップばかり。そんなとき、10年前、都市に災厄をもたらしたとして収監されている聖女・アイリスの処刑が決行されると耳にし、突撃インタビューを敢行したミルコはアイリスの人柄とある事実から彼女が無実だと確信し、勢いで脱獄させたアイリスをひきつれ、逃避行のさなか冤罪を証明するために駆けまわる。
ファンタシー
神速のダンジョン探索者 ~スピード極振り配信者はすべてをブチ抜く~/蛙田アメコ
【あらすじ】ダンジョンが存在する転生地球。配信ダンジョン探索者の蜂須賀スバルは、ふだんはのんびり屋だけど、ダンジョン内では最速スキルの持つ野々村のどかと出会い、撮れ高を感じたスバルは登録者数の伸び悩み打開のためコラボに誘います。のどかのとんでもない活躍は瞬く間に話題に。
凸凹バディのちょっぴりシリアス熱血バトルアクションにして、のどかにいろんな女性から矢印が向けられているのが、たのしい百合作品です。
ホムンクルスの涙 消えたいキミへの錬金術/いのり。
【あらすじ】魔族の侵攻により人類が脅威にさらされている世界の最前線で戦う錬金術師の少女・マハは、母親が代替戦力となるホムンクルスの製造に成功したことを知らされる。戦うことだけが自分の存在意義と思い込むマハにとって、その報せは歓迎されざるものだった。ホムンクルスのルリィの育成を任されたマハは、鬱屈を抱えながらルリィを指導していくが……。
『私の推しは悪役令嬢』のいのり。先生が、その「わたおし」のコミカライズを手がける漫画家・青乃下先生とタッグを組んで送る注目の新刊。いのり。先生の個人レーベルから電子書籍のみでの発売でしたが、数か国語版が刊行されたことでも話題を呼びました。自分の生に価値を見出せなかった少女が、生きる理由を見つけていく、力強いメッセージ性を持つ感動作です。
盗賊少女に転生したけど、周回ボーナスで楽勝です! 100%盗む&逃げるでラクラク冒険者生活/遠藤だいず
【あらすじ】盗賊の才能を得た15歳のリオは、いまいる場所が前世でやり込んでいたゲームの世界であることに気づく。前世ではゲームに入れ込み過ぎたあまり、現世では孤児院育ちで、家族のぬくもりとは縁遠かったリオは、家族のようなクランをつくろうと、仲間とホームを求めて、大好きなゲームの世界をたのしみながら無双していきます。
2巻では、小さき大聖女スピカが仲間に加わり、リオがツンデレ気味なレファーナの見せるギャップにメロついたり、チャラいリオのくさいセリフに骨抜きになるフィオナと、逆にリオを生涯仕えるに足る主と認めるフィオナからその熱意を向けられて互いにテレテレする無限ループと百合的なみどころもあるファンタシーです。
巨大感情
死なない少女の屍体は、ここに。/築地俊彦
【あらすじ】この世に秩序をもたらす律の樹を狙う魔獣を退けるため異能を持つ少女たちによって構成された界律騎士団。団をまとめあげてきた不死身の能力を持つ団長・テッサの遺体が発見される。団の実力者で幼なじみのカリルを追うようにして、入団したばかりのレミナは、カリルの助けになろうと、独自にテッサの死の謎を追いはじめる。不死身のはずの彼女を殺したのはなんだったのか。やがて浮かび上がる遺された想いとは……。
ミステリ風の展開で描かれるファンタシー作品。悲しき愛の物語にして、こと巨大感情ということにかけては2025年を代表する作品だと思います。騎士団のメンバーそれぞれにパートナー的存在がいて、いろんな関係性が描かれているのも特徴的です。
(2巻のあらすじ等で、1巻の真相に触れているので、1巻のみリンクを張ってあります。)
日常と青春
遥か遠くのスターライト/牧野圭祐
【あらすじ】モフモ星人が地球に飛来して30年。花宮陽奈乃は入学先の高校でモフモ星人のルーと出会う。陽奈乃はモフモ星を恋しがるルーのため向こうに手紙を送る計画を思い立つ。物怖じしない気のいい陽奈乃の熱意が、宇宙物理学を学ぶ同級生・宙理や生徒会長の真帆を巻き込み、周囲の人々を動かして、無謀なはずの計画が着々と前に進んでいく。
なかよし女の子たち×夢のあるお話=無限に楽しい!というわけで、天翔ける想いが少女たちをつないでいく青春ストーリーです。
ミステリ
殺されて当然と少女は言った。/空洞ユキ

【あらすじ】高校生の真中理央は、記者会見の席で、殺された父親について「殺されても仕方なかった」と言い放ち、一躍、時の人となる。少女の発言の意図は奈辺にあったのか、少女をめぐる関係者たちの視点から紐解いていく。
真中理央というひとりの少女の実像を多角的な視点から描く構成を採っているため、全体的な百合濃度は低めですが、理央の彼女の視点から描くパートはなかなか濃厚です。ミステリとしても、中心的なトリックは前例はないでもないですが、面白いことをやっていると思います。
官能
※年齢制限のある成人向けのコンテンツのため、未成年者の方の購入は禁止されております。また、この項目は性的な内容を含むため閲覧の際はご注意ください。
2024年には目立った動きがなかった官能百合ジャンルは、このジャンルを支え続けてきたあらおし悠先生の待望の新刊と、ハードな描写が売りの二次元ドリームノベルスの一冊として、電子書籍のみでの発売ですが人間無骨先生の新作が刊行される(ただ、一部のプラットフォームでは販売不可になってしまっていて、こういうときこそ紙の本を出して!出版社さん?)という明るいニュースがありました。
百合魔導人形 夢見る少女のハーレムクエスト/あらおし悠
【あらすじ】のどかな村で教会の管理をしているシュシュは、英雄の血を引いてるけれど、ごく平凡な女の子。それなのに、血筋だからというだけで、魔族の関りが疑われる少女連続誘拐事件の捜査を押し付けられてしまう。教会の宝物庫で長い眠りについていた魔導人形・ソフィアと旅立ったシュシュは、途上で出会った魔族の少女マノンや猫族のミネットとともにパーティを組む。コメディタッチで贈るハーレムファンタシー。
私自身、闇の百合も大好物ですし、ハードな作品も書いているあらおし先生ですが、こと二次元ドリーム文庫の作品に関しては、ハッピーエンド至上主義なところがうれしいです。
邪欲に染まる白百合 無垢の聖女は無恥のシスターに穢される/人間無骨
【あらすじ】家庭教師として貴族の家に入り込み、少女たちを毒牙にかけてきたベスティは正体を知られ、得体の知れぬ女神を崇める邪教の村へと落ち延びた。村の聖女として扱われている少女・ミゼルに焦がれながらも、おとなしく村の修道女として教師の役割を果たしていたベスティだが、ミゼルが女神への生贄に捧げられることになり、その試練に乗じてベスティは欲望を解き放っていく淫靡で濃厚な官能小説。
人間無骨先生の徹底したこだわりが反映されたベスティのクズっぷりは半端なく、そこからさらに底なしの深淵に沈んでいくような結末がたまらないです。
ノベライズ
2025年は原作の世界観をもとに独自の展開を見せるノベライズ作品が豊作でした。
小説 もめんたりー・リリィ ~Precious Interludes~/八薙玉造 原作:GoHands×松竹
人を消す謎の機械・ワイルドハントによって、人類が消滅してしまった世界で、生き残った少女たちが戦う同題TVアニメシリーズの脚本家によるスピンオフ小説集。根性決めた協力プレイで無理ゲーを攻略したり、互いに似合う衣装を選んでみたり、もっと仲良くしたいギャルVS適度な距離を置いて放っておいてほしいゲーマーとの謎の心理戦が発生したり、戦いの合間の少女たちのコミカルな日常を描いています。
6人のメンバーたちのいろんな組み合わせのやりとりが楽しめるうえに、それぞれのメンバーには対になるような相手もいて、幼馴染コンビのえりかとひなげしのちょっと不思議な距離感も印象的ですが、なかでも語彙が故事成語に偏ってるギャルのさざんかと、真面目な委員長(偽)のあやめのコンビが好きです。タイプは違うけど、褒めあいループが発生するくらいとってもなかよしでリスペクトしあうふたりの関係が良きです。
あやかしアラモード/北國ばらっど 原作:安田現象
同名ショートアニメのノベライズ作品ですが、日常のワンシーンを切り取った原作の背景が分かる作品になっています。かつて神社に捨てられていたヨシノは、自分を拾ってくれたちょっぴりいいかげんな神様のウカや、ちいさいときから面倒を見てくれた巫女のマミコ、呪いの人形の楓らに囲まれたにぎやかな日常を送りながら、さまざまな出会いと別れを経験し成長していく、笑って泣けるストーリーです。なかでも私は呪いの日本人形の楓と呪いの西洋人形のカトリーヌのケンカップルのエピソードが好きです。
志乃と恋 Future/日日綴郎 原作:千種みのり
引っ込み思案な志乃と活発な恋は恋人どうし。対照的な高校生ふたりが見せるギャップと意外な関係が魅力の人気百合漫画『志乃と恋』の数年後を描くスピンオフ。モデルとして活躍する恋と数学教師となった志乃。社会人になって、立場も変わり、一緒にいられる時間が減っても、付き合いはじめた頃の熱い想いと新鮮な感動はそのままに、いつまでも変わらないふたりのちょっぴりビターで、とろけそうにスウィートな日々を描くファン必携のノベライズ。
2では同棲を始めた志乃と恋、ふたりで過ごす日常は積み重なり、ふたりで暮らすためのルールも増えていきます。ケンカしても、おあずけを食らう日々が続いても、気持ちが離れるどころか、ますます愛は深まっていくばかり。志乃と恋の甘いやりとりを無限に堪能できます。まだ少ない社会人GLラノベなのもありがたいですね。
私を喰べたい、ひとでなし ノベライズ ~かしましい夜、君は隣に~/古川樹 原案:苗川 采
TVアニメ化された人と人でなしの奇妙な関係を描いた同題漫画のスピンオフ小説。夢の中に閉じ込められた比名子を助けようとしてミイラ取りがミイラになる汐莉(これがほんとの人魚の……) 、3人でのパジャマパーティー、幼少期の比名子と美胡のエピソード、美胡の過去などが描かれます。比名子を挟んでいがみ合う汐莉と美胡のやりとりは楽しく、せつなしんどい原作の空気も充分に味わえます。
まとめ
2025年はTVアニメ化された『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の快進撃が印象的な一年でした。
『処刑少女の生きる道』『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』と長期にわたって書き継がれてきたシリーズ作品が見事大団円を迎えるなか、新作の百合ラノベも続々登場し、なかでも特にガールズラブ作品は、24年の末頃から出なかった月がないくらいの活況を呈しているのが目につきます。レズビアンであることをオープンにした登場人物が増えてきていることもよい傾向だと思います。
10月には1周年を迎えた百合専門レーベルGirls Lineを擁する富士見ファンタジア文庫、23年のデビュー以来、矢継ぎ早に百合シリーズを刊行し続ける犬甘あんず先生を擁するスニーカー文庫をはじめとした多数のライトノベルレーベルを抱えるKADOKAWA勢以外からも注目の作品が現れ、これからの百合ラノベがますます隆盛を極めていくことを願ってやみません。




































