楊花の歌

書誌情報

著者:青波杏あおなみあん
装画:たけもとあかる
装丁:アルビレオ
発行日:2023年2月28日
発売日:2023年2月24日
出版社:集英社
ISBN:9784087718294
版型:四六判上製

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一般文芸GLシスターフッド歴史・時代女学校スパイキス性愛シリアスせつない戦争


1941年、日本占領下の福建省廈門あもい
大阪松島遊廓から逃走して、上海、広州、香港と渡り歩き、廈門に辿り着いたリリーは、抗日活動家の楊に従い、カフェーで女給として働きながら諜報活動をしていた。あるとき、楊から日本軍諜報員の暗殺を指示され、その実行者として、琥珀色の瞳と蛇の刺青が印象的なヤンファという女性を紹介される。
中秋節の晩をきっかけに強くヤンファに惹かれていくリリーにとって、彼女と過ごす時間だけが生への実感を持てるひとときになっていた。
しかし、楊から秘密裏に出されていた指令は、暗殺に失敗した場合はヤンファを殺せというものだった……。
戦時下の中国・廈門を舞台に流転する女性たちの愛と葛藤を描く、圧巻の熱量を放つ第35回小説すばる新人賞受賞作。

引用:集英社

メモ

  百合度 ☆☆ 深度 ☆☆☆

 四部構成になっていて、第一部では、リリーの半生が描かれます。裕福な家庭に育った少女時代から一転、父親の失脚により、遊郭へと売り飛ばされ、その後、中国の地に流れ着きスパイになるまでの経緯が語られます。過酷な境遇、戦争による民族の分断に直面しながらも、リリーと行く先々で出会った女性たちが、支え合って生きる姿が描かれているのも、この作品の印象的なところです。
 そして、中盤、リリーとヤンファが関わった暗殺計画の余波で、ヤンファは生死不明、ふたりは離れ離れに。ハラハラさせる巧みな構成で描かれるせつないふたりの恋のゆくえに、釘付けになってしまいます。
 戦争に対して、人の運命はあまりにはかなく、人々の縁はかぼそい。けれども、運命の濁流に呑まれながらも、断ち切られることなく紡がれた、あるひとつの愛の物語は静かな感動を運んできてくれます。

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