
書誌情報
著者:
カバーイラスト:春日井さゆり
ブックデザイン:アルビレオ
発行日:2023年4月5日
発売日:2023年4月5日
出版社:幻冬舎
ISBN:9784344040663
版型:四六判並製
自殺なんかじゃない。あの子を殺したのはわたしなんだよ。
学校生活だけがすべてだったあの頃の青さと硬さが、痛い。
気鋭の作家が描く「女の子同士の友情」。
転校生の里香は、クラスで浮いていた彩名と仲良くなるが、徐々に彼女の束縛がエスカレートする。彩名の親友が事故死したことを知った里香が死の真相を探るうち、「あの子を殺したのはわたしなんだ」と彩名に告白される。それを境に、持ち物がなくなったり、机に花瓶が置かれたり、不穏な出来事が里香に続く。「あの子の時と同じだ」と噂するクラスメイトたち。なぜ彩名は里香を追い詰めるのだろうか――。
引用:幻冬舎
メモ
転校生の里香は、クラスで浮いていた彩名と徐々に仲良くなっていきます。ひとりぼっちの子を放っておけない里香は、それが行き過ぎた結果、以前の学校ではクラスメイトに無視されるようになってしまい、そのまま転校することになったのですが、そんな経緯があったため、里香自身、新しい人間関係の構築に不安を抱えつつも、やはりひとりでいる彩名のことを気にかけていました。
ところが、次第に彩名は独占欲を露わにし、里香を異様に束縛しようとします。クラスメイト達から彩名に関わらない方がいいと忠告を受けたり、彩名とかつて親友だった同級生が不審な事故死を遂げていたことを知り、不穏な空気を感じ取りながら、諦めずに手を差し伸べる里香と、心に屈託を抱える彩名の関係はどうなってしまうのか、ハラハラさせられる展開があり、思春期ならではの鬱屈した心情が痛々しいほど克明に描かれています。未読の方の興を削がないように結末には触れませんが、読後感は悪くないとだけは申し添えておきます。
ちなみに、結び目とは制服のタイのそれを指し、里香と彩名の結びつきを示すものでもあり、出会いの場面(某有名百合小説を思わせる場面)をはじめ、作中で効果的に使われています。