書誌情報
著者:宮澤伊織
イラスト:窓口基
装幀:伸童舎
発行日:2024年10月31日
発売日:2024年10月31日
出版社:東京創元社
レーベル:創元SF文庫
ISBN:9784488798017
版型:文庫版
宇宙から落下した高次元知性体が、人間と融合した“憑依体”。暴走する彼らを止められるのは、同じ“憑依体”となった少女だけだった。〈裏世界ピクニック〉著者による本格アクションSF!
引用:東京創元社
メモ
全身機械化された兵士たちが、地球外生命に憑依され世界を危機に陥れる災厄と化した人間と戦うミリタリーSF。機械化部隊の男性隊員の視点から描かれていますが、地球外生命に憑依されながらも、人類側の味方となったニーナとカミラのやりとりが楽しい、百合SFとしての側面も持っています。
ニーナは、脅威と戦うために強化された結果、見かけは10代半ばだけれど、ほんとうは8歳(初登場時)。一体だけでも地球を滅ぼしかねない強力な敵に対し、人類の未来という重責を小さな双肩に担う健気な女の子。強大な力を持つ反面、年相応の幼さもあって、いっしょに戦う辛苦の分ちあえるおともだちを求めています。
一方、相方となるカミラは、20代の大人の女性ですが、人類にとって死は救いであるという厄介な思想の持ち主で、近寄るだけで生物に死をもたらすことができる物騒な能力を持つキャラ。悪さを働いたときに、一度、ボコボコにされてから、ニーナをボスとして認めているため、態度はぶっきらぼうながらも、ニーナには従順で献身的、ときにはちょっと意地悪をしてみたりと、ニーナをかわいがっています。それに、ニーナ以外には懐かず、周囲には酷薄な面を覗かせるのも特徴です。
ニーナにとっても大事な仲間であり、保護者的な立場でもあるカミラですが、もう少し話が合う同年代の子とお友達になれたらいいなと思うニーナに対して拗ねてしまったり、姉妹のような関係性ですが、どっちがお姉ちゃんなのかわからなくなるようなくるくる立場の入れ変わる関係で魅せてくれます。
百合がメインの作品ではありませんが、百合の神髄をよく理解してる作者だけに、ひとつ一つの描写が濃密で、百合好きにとっても読んで損はない作品だと思います。