書誌情報
著者:宮澤伊織
装画:加藤直之
装幀:岩郷重力+T.N
発行日:2020年6月30日
発売日:2020年6月30日
出版社:東京創元社
レーベル:創元日本SF叢書
ISBN:9784488018467
版型:四六判仮フランス装
一面の砂漠と化した北京。廃墟となった紫禁城に、米軍の最新鋭戦争サイボーグ部隊が降り立った。標的は単独で首都を壊滅させた神のごとき“超人”。その圧倒的な戦闘能力になす術もなく倒れゆく隊員たちの眼前に、突如青い炎を曳いて一人の少女が現れた――第6回創元SF短編賞受賞作にはじまる本格アクションSF連作長編。
引用:東京創元社
メモ
全身機械化された兵士たちが、地球外生命に憑依され世界を危機に陥れる災厄と化した人間と戦うミリタリーSF。機械化部隊の男性隊員の視点から描かれていますが、地球外生命に憑依されながらも、人類側の味方となったニーナとカミラのやりとりが楽しい、百合SFとしての側面も持っています。
ニーナは、脅威と戦うために強化された結果、見かけは10代半ばだけれど、ほんとうは8歳(初登場時)。一体だけでも地球を滅ぼしかねない強力な敵に対し、人類の未来という重責を小さな双肩に担う健気な女の子。
そのニーナの相方となるカミラは、20代の大人の女性。人類にとって死は救いであるという厄介な思想の持ち主で、近寄るだけで生物に死をもたらすことができるという物騒な能力を持つキャラ。悪さを働いたときに、一度、ボコボコにされてから、ニーナをボスとして認め、態度はぶっきらぼうながらも、ニーナには従順で献身的。けれど、ニーナをかわいく思うあまりに、ときにはちょっと意地悪をしてみたりすることも。それに、ニーナ以外の人物には懐かず、酷薄な面を覗かせるのも特徴です。
ニーナにとっても大事な仲間であり、保護者的な立場でもあるカミラですが、もう少し話が合う同年代の子とお友達になれたらいいなと思うニーナに対して拗ねてしまったり、姉妹のような関係性ですが、どっちがお姉ちゃんなのかわからなくなるようなくるくる立場の入れ変わる関係で魅せてくれます。
百合がメインの作品ではありませんが、百合の神髄をよく理解してる作者だけに、ひとつ一つの描写が濃密で、百合好きにとっても読んで損はない作品だと思います。