書誌情報
著者:李琴峰
写真:Rieko Honma「祈り」shutterstock.com
装丁:坂野公一+吉田友美(welle design)
発行日:2020年7月20日
発売日:2020年7月15日
出版社:集英社
ISBN:9784087717198
版型:四六判上製
初出:「すばる」(集英社)2019年12月号
あらゆる縛りから逃れたいと願う二人の女性は、異国の地・日本で出会った――。
両親の反対を押し切り、日本の大学で日本語を教える台湾人の柳凝月(りゅうぎょうげつ)は、新疆ウイグル自治区出身で、日本の大学院を目指す生徒の玉麗吐孜(ユーリートゥーズー)に初めて会った時から魅了されていた。玉麗吐孜もまた、柳凝月に惹かれていた。ある日、玉麗吐孜の元恋人の同居人が部屋を出て行くと言い出し、家賃問題に悩んでいた彼女は付き合い始めの柳との同居を考えたが、今の距離感が心地よく、これ以上親密になるのを恐れていた。一方、柳は玉麗吐孜の受験が上手くいったら一緒に暮らし、いつか結婚しようという想いが募っていた。期待もあえなく、玉麗吐孜は不合格通知を受け、日本に残る理由を失っていた。生国の政治情勢、家族のこと、隠している自分のセクシュアリティー……。共通の言語を持ち、語り合い、玉麗吐孜のことを分かっていると思っていた柳だが、玉麗吐孜が背負う重りを知らずにいた自分に気付く……。
今、注目の新日本語文学の旗手が描く、静かな祈りの物語。
引用:集英社
メモ
日本で知り合い恋人同士になった台湾出身の女性と、新疆出身のウイグル族の女性。言語の壁や政治、セクシャル・マイノリティであることが、惹かれあう者どうし、寄り添い共に生きる、ただそれだけのことを、どれだけ難しくしているか静かに訴えかけてくる作品です。