書誌情報
著者:空木春宵
装画:machina
装幀:内海由
解説:橋本輝幸
発行日:2021年7月30日
発売日:2021年7月29日
出版社:東京創元社
レーベル:創元日本SF叢書
ISBN:978448808436
版型:四六判仮フランス装
一般文芸短編集SFホラー幻想多様な性女学校学生ゾンビ性愛シリアスダーク繊細インモラルルッキズム児童虐待
昭和初期、浅草六区のアングラ劇団。高い塀で外の世界と隔絶された学校に閉じ込められて三年間を過ごす女生徒たち。時代も場所も異なる世界に生きる孤独な魂を描いた全5編。
引用:東京創元社
メモ
2011年に、創元SF短編賞佳作を受賞。以降、アンソロジーや雑誌に短編を発表してきた著者の初作品集である本書。いづれの作品も湿り気を帯びた退廃的な雰囲気を纏う、グロテスクな想像力に満ちています。
「感応グラン=ギニョル」(初出:『ミステリーズ!』vol.96 2019年8月)
昭和初期の浅草。身体に損傷のある少女ばかりを集めた演劇一座に新たに迎え入れられたのは「心が無い」少女であったという表題作。意思を持たないかわりに、他者の記憶を読み取り、共有するテレパス能力を持った彼女の加入によって、拵えものに過ぎなかった一座の少女たちの見せる悪夢は本物へと変わっていきます。少女を介して夜な夜な混じり合い交歓する一座の少女たちは、結びつきを強めていき、衝撃的な結末へとなだれ込んでいきます。
「地獄を縫い取る」(初出:『Genesis 白昼夢通信』東京創元社 2019年12月)
児童性愛者の発見・摘発を目的としたAIモデルを作成する2人の女性のやりとりと、室町時代の遊女、地獄大夫の伝承を基にしたパートが次第にリンクしていく作品。
「メタモルフォシスの籠」(初出:『Genesis されど星は流れる』東京創元社 2020年8月)
失恋すると、女は蛇に、男は蝦蟇に変化していき、恋した人を喰らおうとするようになってしまう奇病の発生により、自由恋愛が禁止された社会が舞台。発症によって、社会から放逐された者同士のひとときの交流が描かれます。
「徒花物語」(初出:『Webミステリーズ!』東京創元社 2020年12月)
徐々に身体の機能が失われていく感染症に罹患した少女たちを集めた女学校を舞台に、『花物語』に倣い章題を花の名前で統一するなど、吉屋信子の世界観とゾンビものを融合した作品。おぞましい真実が明かされていくとともに、ふたりの少女の間のすれ違いも描かれます。
「Rampo Sicks」(書下ろし)
計測された美醜値によって、人々が管理される街。美しいと判断された者は、<美醜探偵団>によって、嬲り者にされる。そんな街でいちばん醜いと判断された少女・不見世は、<美醜探偵団>に盾突く謎の女賊・皓蜥蜴と街の支配者・諸妬姫の争いに巻き込まれます。タイトルにもあるように江戸川乱歩の作品を彩った意匠をふんだんに詰め込んだ表題作のその後を描いた作品です。