書誌情報
著者:煮ル果実
装画:小田嶋歩
本文写真:PIXTA
デザイン:植草可純・前田歩来(APRON)
発行日:2024年1月22日
発売日:2024年1月22日
出版社:KADOKAWA
ISBN:9784048976091
版型:四六判並製
一般文芸短編集非百合混在GLロマンシスミステリスピンオフ囚人刑務官バディシリアスしんどいダーク同性愛差別アウティング
異色のボカロP煮ル果実、小説家デビュー
物語性で人を惹きつけ、考察の渦に巻き込んだ人気曲を、自ら再解釈し小説を執筆。
大ヒット曲「トラフィック・ジャム」「紗痲」「ナイトルール」の3曲のテーマから創られた物語を一冊にまとめた、煮ル果実の世界観に迷い込める短編集。
◎「トラフィック・ジャム」
社会の歯車として味気ない生活を送っていた男の世界は、自身が起こした交通事故を境に一変する。襲ってくる人々の目に浮かんでいたのは、黄色と黒の警告色であった。
◎「紗痲」
女子刑務所に収容された少女は、同室の蛇女の課す試練を乗り越え、仲間として迎え入れられる。ある出来事を機に確かな主従の関係を結んだ二人は、ひとつの計画を企てる。
◎「ナイトルール」
18時から24時迄を繰り返す世界に閉じ込められた男は、彷徨い歩いた末に、一人の少女に出会う。彼女とならこの夜を生き抜ける、初めてそう感じた矢先、彼女は夜に取り込まれる。
※「ナイトルール」は、著者が過去にホームページにて公開した小説に、加筆修正を施し収録しています。
引用:KADOKAWA
メモ
タグ、メモで対象としているのは、3篇の収録作のうち、「紗痲」のみです。期間限定で、Amazonで紙書籍を購入すると読める「紗痲」のアナザーストーリーは、トマトナとロップイヤーが登場し、彼女たちのバディとしてのコンビネーションは垣間見られますが、作家や創作が主なテーマとなっており、ほぼ百合要素はありません。
囚人の間で幅を利かすトマトナと、その手先として使われるロップイヤーと呼ばれる少女、一方的に利用しているような関係だったふたりに、次第に芽生えていく絆がメインに描かれた百合作品。のっけから、主人公が過去に行ったアウティング行為を悪夢で見たり、刑務所長が同性愛嫌悪を露わにするシーンがあったり、読む人を選ぶ作品です。ロップイヤーが所内で、よくこんなことを思いつくなと思えるくらい奇矯な囚人たちに出会うのですが、囚人たちが曰くいいがたい魅力と存在感を放っているかわりに、刑務所長が残忍で権力欲に取りつかれた型にはまった悪役でしかないのが、少し救いでしょうか。