
書誌情報
原題(発表年):ORANGES ARE NOT THE ONLY FRUIT(1985)
著者:ジャネット・ウィンターソン(JEANETTE WINTERSON)
翻訳:岸本佐知子
装画:
装幀:
発行日:2011年9月1日
発売日:2011年9月8日
出版社:白水社
レーベル:白水Uブックス
ISBN:9784560071762
版型:新書判
一般文芸GLシスターフッド日常映像化作品レズビアンキス性愛シリアスユーモア同性愛同性愛差別
狂信的なキリスト教徒の母から特殊な英才教育を受けて育ったジャネットは、幼くして説教壇に立つようになる。しかし、初めて恋を知った彼女には、恐るべき〈受難〉が待っていた……。奇想とアイロニーに満ちた半自伝的小説。ウィットブレッド賞最優秀処女作賞受賞作。
引用:白水社
メモ
狂信的なキリスト教徒の母親に育てられた女性の生い立ちと、その母親との決別を描く作品というと、さぞかし暗く重い作品なのだろうと思われるかもしれませんが、全編が悲しみや苦しみさえも包みこむようなユーモアに満ちており、不思議と軽やかな読後感へと導きます。
主人公のジャネットは、母親から『黙示録』や聖人譚を絵本や教科書がわりに徹底した宗教教育を施され、幼くして説教壇に立ち、将来は伝道師になるものと疑いもしませんでした。彼女は、小学校でも地獄について熱弁をふるって級友を震え上がらせたり、課題には必ず宗教的モチーフを持ち込んだりと、教師たちを困惑させるほど“子どもらしさ”とは無縁の存在でした。学校では孤立しつつも、信仰に揺らぎのなかった幼少期のジャネットの無敵ぶりがおもしろおかしく描かれています。なかでも、年上の教会仲間であり、彼女の最大の理解者だったエルシーとの交流は、温かく心に残る場面です。
しかし、ジャネットが女性に恋をしたときから状況は一変します。同性愛者であるということを理由に牧師や母親をはじめとした教会の信者たちから弾劾され、その最中でも味方であろうとしたエルシーの闘病中にも近づくことを許されず、葬儀からも遠ざけられてしまう。さらに、はじめての恋人の変節を目の当たりにするなど、悲痛な出来事があいついで彼女に降りかかってきます。それでもなお、作品に宿るしなやかで強かなユーモアは失われず、読者を力づけてくれます。


