オレンジだけが果物じゃない

書誌情報

原題(発表年):ORANGES ARE NOT THE ONLY FRUIT(1985)
著者:ジャネット・ウィンターソン(JEANETTE WINTERSON)
翻訳:岸本佐知子
装画:エルサ・モーラ
装幀:前田英造(坂川事務所)
発行日:2002年6月25日
発売日:2002年7月1日
出版社:国書刊行会
レーベル:文学の冒険
ISBN:9784336039620
版型:四六判上製

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狂信的なキリスト教信者の母親と、母親から訣別し、本当の自分を探そうとする娘。イギリス北部の貧しい町を舞台に、娘の一人称で語られる黒い哄笑に満ちた物語。寓話や伝説のパロディもちりばめた自伝的小説。

引用:国書刊行会

メモ

  百合度 ☆ 深度 ☆

 狂信的なキリスト教徒の母親に育てられた女性の生い立ちと、その母親との決別を描く作品というと、さぞかし暗く重い作品なのだろうと思われるかもしれませんが、全編が悲しみや苦しみさえも包みこむようなユーモアに満ちており、不思議と軽やかな読後感へと導きます。

 主人公のジャネットは、母親から『黙示録』や聖人譚を絵本や教科書がわりに徹底した宗教教育を施され、幼くして説教壇に立ち、将来は伝道師になるものと疑いもしませんでした。彼女は、小学校でも地獄について熱弁をふるって級友を震え上がらせたり、課題には必ず宗教的モチーフを持ち込んだりと、教師たちを困惑させるほど“子どもらしさ”とは無縁の存在でした。学校では孤立しつつも、信仰に揺らぎのなかった幼少期のジャネットの無敵ぶりがおもしろおかしく描かれています。なかでも、年上の教会仲間であり、彼女の最大の理解者だったエルシーとの交流は、温かく心に残る場面です。

 しかし、ジャネットが女性に恋をしたときから状況は一変します。同性愛者であるということを理由に牧師や母親をはじめとした教会の信者たちから弾劾され、その最中でも味方であろうとしたエルシーの闘病中にも近づくことを許されず、葬儀からも遠ざけられてしまう。さらに、はじめての恋人の変節を目の当たりにするなど、悲痛な出来事があいついで彼女に降りかかってきます。それでもなお、作品に宿るしなやかで強かなユーモアは失われず、読者を力づけてくれます。

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