今週発売の百合文芸(6/17~6/23)

 TVアニメが最終回を迎えたばかりの『夜のクラゲは泳げない』。ノベライズの2巻が発売。アニメ5話から8話までのエピソードを収録した巻です。
 クライマックスが近づいてきた『乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル』8巻は最終章の前編に当たる巻。王太子に代わり、王として立つ覚悟を決めた王女エレーナ。アリアは、自らをエサにして、即位の障害となる敵をあぶり出しにかかります。偽ヒロインの暗躍にも焦点が当たり、この巻でのエレーナとの絡みはちょっと少な目ですが、固い絆で結ばれたエレーナとアリアの行方、最強の悪役令嬢カルラとアリアの決着がどのようになるか楽しみです。
 『聖女先生の魔法は進んでる』2巻は、師・ティアと当時の仲間たちの運命を変えた事件の黒幕が登場。ティアと教え子の3人は、ふたたび動き出した黒幕の陰謀に巻き込まれていきます。ティアの昔の仲間たちも顔を出し、新たな関係性も描きつつ、教え子たちに成長をもたらし、師弟の信頼関係が深まっていく熱い展開をみせてくれます。

 『魂婚心中』は、SFミステリを集めた短編集。推しに対するファンの複雑な感情を描いた表題作。先輩と後輩の辛すぎるハッピーエンドがせつない掌編「二十五万分の一」、ある事件を機に関係が歪んでしまった主従の行方を描いた「九月某日の誓い」の3編は百合小説として注目です。
 『死ねばいい! 呪った女と暮らします』は、一人暮らしの高齢女性が、台風の夜、庭に倒れていた同年代の女性を助けたことからはじまるシスターフッドを描いた作品。タイトルが回収されるのは物語のだいぶ後半になってからなので、最初は印象が違い、老後の悲哀とタイプの違う女性同士の交流がユーモアを交えて描かれています。タイトル回収後は、心温まる交流の図から一転して、ふたりの女性の間に暗雲が立ち込めてきますが、最後に示される主人公女性の決意が痛快な作品です。
 『みんな蛍を殺したかった』と『致死量の友だち』が文庫化。どちらも異様な女性同士の関係性を描いた作品ですが、後者には、単行本で描かれた結末のその後を描いた章が追加されています。

 集英社みらい文庫の1冊として出版された『きのうの君とみらいの君へ』は、LGBTQ+当事者の体験談を基に小説化したノンフィクション。当事者の子どもたちにも届いてほしいですが、非当事者としても、周囲の無理解がいかに当事者を追い詰めてしまうのかを知ることは、決して無益ではないと思いますので、広く読まれることを願っています。


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