今週の百合文芸ニュース(6/10~6/16)

 まずは、先週発売の作品ですが、『声優ラジオのウラオモテ #11 夕陽とやすみは一緒にいられない?』は、高校卒業目前となった夕陽とやすみを描く巻。クラスメイトでなくなったら疎遠になってしまうのではないかと危惧するやすみと裏腹に、いつもどおりの態度の夕陽の温度差にちょっぴりやきもきさせられます。さらに、天才的な演技力で夕陽たちを脅かす後輩・高橋結衣と共演することになった夕陽。ふたりの直接対決も熱い展開を見せてくれます。

 14日には、児童文学作家・村上雅郁の新作『かなたのif』が発売されました。これまでの全作品でも、様々な女の子どうしの関係が描かれてきましたが、本作は香奈多かなた瑚子ここというふたりの女の子の関係を描いたガールミーツガール。引き込まれる展開、彼女たちを見守る周囲の人々の染み入る優しさ、絶望の先の希望を描いた、抜群のエンターテインメント作品であり、せつなくもあたたかい気持ちになれる作品でした。

 先日、第171回芥川賞・直木賞の候補作が発表されました。直木賞候補となった青崎有吾は、実業之日本社から発行された百合小説アンソロジー『彼女。』および今月発売予定の百合小説アンソロジー第二弾『貴女。』にも寄稿されている作家。候補作の『地雷グリコ』は、すでに数々の賞を制している、ギャンブル漫画の戦略性と、本格ミステリのロジックが融合した出色のミステリ作品ですが、主人公の女子高生・射守矢真兎もりやまとと語り手の同級生・鉱田とのちょっと複雑な感情が描かれた熱い展開を見せる友情百合でもありますので、ミステリと百合にご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

 芥川賞候補の坂崎かおるといえば、第一作品集『嘘つき姫』に収録された数編のほか、百合専門文芸誌『零合』にも寄稿されている百合文芸との関りも深い作家ですが、候補作の『海岸通り』も“海辺の老人ホームに集う女たちのゆるやかなつながり”が描かれているそうなので、7月10日の単行本の発売を楽しみに待ちたいと思います。

 7月の百合文芸カレンダーを更新しました。
 『百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話 その4』は、約1年半ぶりのシリーズ新刊。ライトノベルでは、よく発売直後の初動で続刊が決まるといわれるなか、こうして続いてくれたのはありがたいことです。三人交際から始まり、妹たちからも恋心を寄せられ、「その3」からは、幼馴染のアイドルまで加わった四葉争奪戦。止まるところを知らない百合ハーレムの行方が読めるのをとても楽しみにしています。
 『ある魔女が死ぬまで』は刊行後2年以上経ってから、突如、アニメ化が発表され、続刊の刊行となりました。師弟の絆が中心に描かれた作品です。
 『たぶん私たち一生最強』は、既存の恋愛・結婚システムに反旗を翻し、家族として共同生活をはじめた4人の親友の女性たちを描いたシスターフッド作品です。

 先週末頃から、KADOKAWAが執拗なサイバー攻撃を受け、システム障害が発生していることが話題になっていますが、物流の停滞、これからの刊行予定にも遅延が発生する可能性があるなど、多くの作家・作品に影響がありそうで、心配です。一刻も早く復旧されることを願っています。刊行予定も変更があれば随時更新していきたいと思います。

発売日タイトル/作者出版社/レーベル
7/2
あの日のあなた
中川なをみ
くもん出版
7/5

日月潭の朱い花
青波杏
集英社
7/9
彼岸花が咲く島
李琴峰 文庫化
文藝春秋
文春文庫
7/10
少女星間漂流記 (2)
東崎惟子
KADOKAWA
電撃文庫
海岸通り
坂崎かおる
文藝春秋
7/12
いなくなくならなくならないで
向坂くじら
河出書房新社
7/17
ホームセンターごと呼び出された私の大迷宮リノベーション! (2)
星崎崑
SBクリエイティブ
GAノベル
7/18
小説 夜のクラゲは泳げない (3)
尾久ユウキ
小学館
ガガガ文庫
7/20
Vtuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた (9)
七斗七
KADOKAWA
富士見ファンタジア文庫
真夜中ぱんチ
日日綴郎
KADOKAWA
富士見ファンタジア文庫
7/23
たぶん私たち一生最強
小林 早代子
新潮社
7/24
百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話 その4
としぞう
オーバーラップ
オーバーラップ文庫
7/25
竜王さまの気ままな異世界ライフ (1) 最強ドラゴンは絶対に働きたくない
よっしゃあっ!
KADOKAWA
MFブックス
7/27
ウィッチーズ・セレクト 二人の魔女の英雄譚
雨宮和希
BookBase
ダンガン文庫




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